関税引き上げがもたらす建設・不動産業界への複合的影響とは
2025年4月2日、アメリカのトランプ大統領が打ち出した「相互関税(Reciprocal Tariff)」政策により、日本に対して24%の関税を課す方針が明らかになりました。
この政策は、相手国がアメリカに課している関税率や非関税障壁と同等の制裁を行うというもので、自由貿易体制を揺るがす可能性があるとともに、世界経済への悪影響が懸念されています。
では、日本の不動産業界や建築業界にどのような影響を与えるのでしょうか。
建設コストの上昇がもたらす市場構造の変化
まず直撃するのが、建設資材の価格高騰です。
鉄鋼やアルミニウムなど、あらゆる建築に不可欠な資材が高関税の対象となれば、建築現場のコストは一気に膨れ上がります。
特に大型の商業施設やマンション開発などは、材料費が数%上がるだけで数千万円〜数億円規模の負担増となり、収益性が大きく損なわれる可能性があります。
これにより、新築物件の販売価格は上昇傾向を強め、消費者の「手が届く価格帯」から逸脱する懸念があります。
住宅購入希望者の減少は、取引量の減少や販売ペースの鈍化へと直結し、市場全体の流動性を低下させるリスクがあります。
さらに、利回りが悪化することで投資家も消極的になり、建設の先細りを招きかねません。
インフレと金利上昇が追い打ちをかける住宅市場
建設コストの増加や物価全体の上昇は、やがてインフレ圧力を高め、日本銀行が政策金利を引き上げる可能性を強めます。
これが住宅ローン金利に波及すれば、月々の返済額が上昇し、住宅購入のハードルは一気に高くなります。
特に、長期ローンを前提とする若年層や初めて住宅を購入する層にとっては、「借りたくても借りられない」状況が拡大し、住宅需要の冷え込みが加速します。
これにより不動産価格には調整圧力がかかり、市場の停滞、資産価値の目減りといった二次的な悪影響も無視できません。
さらに、金利上昇は資金調達コストの増加にもつながり、不動産投資信託(REIT)や企業の不動産投資の動きにもブレーキがかかる可能性があります。
特に海外投資家にとっては、日本の市場環境が「不安定で魅力に欠ける」と映るリスクもあり、資金流出が起こることも想定されます。
労働力不足と経済成長鈍化による間接的な打撃
さらに見過ごせないのが、建設現場における人手不足の深刻化です。
現在でも高齢化と若年層離れにより人材確保が困難な中、移民政策の変化や国際情勢の影響で、外国人労働者の受け入れが滞れば、現場の稼働率低下や工期遅延、さらには人件費の高騰が避けられません。
こうした労働力不足は、建設コストをさらに押し上げる要因となり、プロジェクト全体の計画に遅れや中断を招く恐れがあります。
特に小規模な工務店やデベロッパーにとっては、資金繰りの悪化や倒産リスクも現実のものとなる可能性があります。
また、関税の影響は輸出企業の業績悪化にも波及し、国内経済全体の成長を鈍化させる懸念があります。
消費者の購買意欲が低下すれば、不動産や建築といった高額商品への支出も縮小し、業界全体が「投資も売買も控える」ムードに包まれる危険性があります。
今後の展望と業界の備え
今回の関税引き上げは、表面的には資材コストの上昇に見えますが、その裏側には金利・労働・経済環境など、さまざまな要素が連鎖的に絡んでいます。
不動産・建設業界にとっては、コスト管理だけでなく、資材調達の多様化、労働力確保の仕組みづくり、金融リスクへの備えなど、構造的な対応が求められる時期に差し掛かっています。
中長期的に見れば、このような政策変動は業界の再編や技術革新のきっかけともなり得ます。
たとえば、国産材や再生素材の活用、省人化工法の導入、地域循環型経済の構築など、新たな可能性を模索する機会でもあるのです。
経済の先行きが不透明な今こそ、柔軟かつ前向きな姿勢で変化に対応することが、次の成長への鍵となるでしょう。
ライター:森田 貴大 AM事業部
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